12.新風「リメイク」と伝統の呉服を守り続ける3代目
吉原呉服店(柳町4丁目) 吉原 勲
創業は大正元年、ご自身で3代目、先代は昭和62年に他界、以後20年近く試行錯誤の中で伝統
の呉服を守り続けてきた。幸いにして今もってご健在である母親・貞子さん (82・写真)が呉服通
であり、業界の生き字引的存在である。ちなみに、呉服の変遷に始まって、着物の仕立、柄合わせ、
染め替え・染め直し、シミ落とし、さらには着付けに至るまで「何でも御座れ」といった具合であり、
百貨店・量販店や他の専門店でさえ得られない呉服情報が聞けるとあってそのファンも多い。
当店は呉服や業界の裏の裏まで知り尽くした母親のノウハウに加えて、積極的な展示会の開催と
着物を洋服や着物に作り替える「リメイク」などのアイデアがリピート客獲得に?がっている。本人は
商工会や商店会・地域の街づくり委員会などの役職も兼ねボランタリー活動にも余念がない。
ところで、生活が洋風化になって既に久しく、日常和服を着る機会は、冠婚葬祭を除けば皆無とい
ってもよいくらいで、一般に生活に馴染んでいない。このため、「着てみたい・着て行きたい」と思って
いても、「一人では着られない」「価格が高い」「後のクリーニングを含めてタンス・クローゼット収納まで
手間取る」などきものへの抵抗感が払拭出来ないことも相まって、呉服市場は縮小が続いている。
全国の呉服・服地小売業の推移を経済産業省「商業統計表」でみれば、平成元年と平成14年の
時点(カッコ内は14年)を比較してみると、商店数が約3万1千軒(同1万7千軒)、従業者数が約12万5千人
(同7万2千人)、年間販売額約1兆8456億(同9,784億円)で、それぞれほぼ半減している。
一方、お店サイドからすれば、成人式、入卒式、七五三などに対する依存度が高く、季節性が大きい
商品ゆえに、在庫負担は他の小売業よりも大きくならざるを得ない。このため仕入を小口化したり、無理
な営業を余儀なくされることも少なくない。このような厳しい環境下にあるにも拘らず、当店は業界のよき
伝統は受け継ぎ、かつリメイクに象徴される新しい工夫や着こなし等へのアイデアを駆使しながら、独自色
を打ち出したいとしている。
(営業時間:午前9時〜午後7時 定休日:木曜日 電話0743−52−3391)